輪ゴムのごとく

何から始める?

数年前に行ったUSJの話1


25歳の時だったと思う。
ボケてくれと要求したら「出来ない……もう25歳だから出来ない……」と悲しみにくれていたので、たぶん25歳の時だったんだと思う。



USJに行きたいと思った。



そう思った。しかし、発案はしても何しろ計画性に乏しい。
行きたいね!だよね!行きたくね?だよねぇ?ねぇーってばーーーだーれーかーー連れてってーーーーのおんぶに抱っこの精神でいたら、友達の白井さんが何もかも全部調べつくしてくれた。


私は結局最後まで何故あんまり待たずに乗り物に乗れるのかだとか、パーク内で食事すると早く乗れる券が買えるだとか、そういうのに疑問を持たなかった。全部なるほどへぇ~~そうなんですかそりゃ便利!と思ったけれど、本当は全然理解してなかった。


そんな当時の私も、少しはこの企画に貢献したかったのだろう。みんなにお弁当を作って行こうと思い立った。遠出する日の朝は早い。朝ごはんも食べずにグーペコで来るはずだ。何?買ってくる?いいっていいって、私持っていくからお弁当!!
半ば強引に弁当で色々チャラにしてもらおうという魂胆である。


でもね、私そんなに料理したことねぇわ。やべぇわ。よく分かんねぇわ。


カツサンドと鶏のつくねと玉子焼き。たしか、白井さんのリクエストだったと思う。料理とか分かんねぇわっていう人間でもギリギリ出来そうなやつ。いや朝からカツサンドて。白井さんはちょっと豪快なところがある。




当日、朝。

私は苦手なことがいっっっっっっぱいある。いっっっぱいだ。


まず、早起き。
やっちまった。寝坊した。

かなり早い時間の電車に乗る予定だった。起きたと同時に「あ、化粧は出来ねぇな」と悟った。
カツ(惣菜)をパンに挟みこみ、卵をガシガシかき混ぜてフライパンに流し込む。カツサンドは昼ご飯までまかなえるサイズだったし、玉子焼きもひじきでも入れたんか?って色だったけれど、最後に色のうす~~いつくねを添えて、無事完成。間に合った。完璧だった。それ以上の追求は時間が許さなかったこともあり、そう思うことにした。



私がすっぴんで現れたことで、白井さんと吉野は「あ、こいつ寝坊したな」と瞬時に悟ったはずだ。
それぞれ皆眠たそうで、それでいて楽しげな雰囲気をまとっていた。

電車に乗るやいなや、嬉しそうにお弁当とかどう?お腹空いてない?と確認をする。色々丸出しだ。丸出しで恥ずかしい。


カツサンドは好評だった。惣菜万歳。しかし、玉子焼きが焦げていることも話題にならないくらい、とにかくつくねに味が無かった。「つくねは?」と聞くと、白井さんが力なく「うん…」とだけ言ってつくねの入った弁当箱の蓋を閉じた。味の無いつくねの罪深さを知った瞬間である。


本当なら、味の無いつくねを作って申し訳ありませんでした!!!と謝るところかもしれない。頑張って作ったのに~~と嘆いてもいいのかもしれない。
しかしそれよりもみんな早起きをしたせいで、あまりの眠たさにハイになっていたのである。


弁当箱にはポツンと残された可哀想なつくねだけ。


白井さんは既に箸を置いている。ねぇ、本当の終わりの合図じゃん!


眠たそうにカツサンドをほうばっていた吉野だったが、おもむろに弁当箱の写真を撮ると、今度はそれ私達に見せつけ始めた。


うらうら~~~じゃないんだよ。見てこれ見てこれじゃないんだよ。何なの。何なの朝からこの仕打ち。



早朝の車内は静かだ。分かっている。静かにしないと。分かっているから余計に面白くなってくる。眠たさでおかしくなっているのだ。
いやまてよ、自作の弁当を可哀想とまで言われて誰が笑えるのか。そうだよね、白井さん!って確認したら、白井さんは笑いすぎて泣いていた。静かに笑うことに集中しすぎて、ただ泣いているようにも見えた。異様である。こんなの電車で遭遇したらきっと怖い。


電車の乗客達は皆眠たそうにしている。そこに、意味の分からない写真を見て死ぬほど笑いこける女が三人。
電車は大阪へと向かうのだった。